油絵の背景の描き方!表現力を高めるパターンと色の効果
ご訪問くださりありがとうございます^^
油絵×心像画家の中西宇仁です。
今回は、油絵の世界観を強固にする為の背景の描き方についてお話したいと思います。
背景がある事でモチーフに対する印象に物語性を持たせ作品の完成度が高まります。
背景のスタイルをテーマやモチーフに合わせていく事で理想の表現に限りなく近づける事が出来ます。
背景のメカニズムに触れ、更なる表現力の拡張へ繋げてみましょう!!
目次
【 背景の重要性 】
絵でいう背景とは、人や物などメインとなるモチーフの後ろに控えた空間です。
メインを引き立てる為の脇役ですがこの背景があるないで作品の印象がガラッと変わります。
テーマパークであれば主役キャラクターがメインでこの世界観を引き立てるのがキャストですね。
コンサートなら歌い手がメインで背景にバックダンサーが居る事で臨場感を強調しています。
お料理なら出汁のような存在で、食材全体の味を整え風味や味の方向性を定めます。
背景の取り入れ方によって作品の世界観をコントロールする事ができるので自分が描きたい理想像に近づける事も出来ます!
背景が持つ影響と活かす為の色の効果についてご紹介しますね^^
【 油絵の背景パターン 】
背景と一言で言ってもスタイルによって印象ががらっと変わります。
背景のパターンを意識する事で他の色やモチーフを活かせるようになります♪
●自然体の背景を描く
実際に見える風景や環境を背景に取り入れる事でリアリ要素が定まり、作品全体に自然な説得力が生まれます。
特に風景画や人物画では、背景をありのままに描くことでモチーフとの一体感を出せます。
人は、日常生活や今までの経験から物事を紐づけていくので自然をテーマにした作品なら森や空、山、お庭や日常風景があることで自然体を感じます。
メインとなるモチーフが近くにあり遠く離れた背景にあるという構図になりますが色のコントラスト(明るい部分と暗い部分の調整)を変えたり協調する所は明確化し、そうでない部分はぼかしてあげると画面上にリズムを生みやすくなります。


●色だけで背景を描く
モチーフの印象を引き立てたい時は、背景に具体的な描写を省き色の広がりだけで表現するのも効果的です。
余計な情報がなくなることで、主題がより際立ち、写実的なモチーフに対しても抽象的な印象を持たせる事ができます。
アニメでも登場人物が喜んでいたら背景を明るくしたり落ち込むシーンであれば背景を暗くしてメインとなる人物やモチーフの心象を表しています。
明日のジョーでも「燃え尽きた・・・」という有名シーンで、背景が真っ白にする事で状態を表していますね。
お部屋も和食屋さんや和菓子屋さんなら落ち着きや懐かしさを持たせる為に内装を茶色にしている所を見かける事もあるのかなと。
下の絵のように同じ赤薔薇でも印象が変わるかと思います。


●物を用いて背景を描く
家具・植物・小物などを背景に置くことで、生活感や物語性をメインとなるモチーフに付加し、観る人に想像を掻き立てる事ができます。
特に15世紀頃から流行した風俗画では、人の営みを表す為に調理器具や生活品などを背景に置く事でその場に居る人達のやり取りをイメージさせています。
私生活でも室内や作業場周りが整理整頓されていたらその人は、自己管理を意識している人だなと思うし、散らかっていたら自由な人なのかなと想像力が湧きます。
それを絵の背景に起こす事で観る人の印象を導くことが出来るという事です!

●背景に奥行きを出す
遠近法や空気遠近法を利用し、前と後ろの空間やモチーフに境目をつくり画面全体に立体感を与えモチーフの存在感を強める事ができます。
今まで説明した自然体を背景にするとはまた別で単一な色だとしてもグラデーションを作る事で背景に複数の面を生み出し、単純な立体空間を表し、静物画で活かしやすい表現です。
ユニーク性で言うならピカソやブラックが生み出したキュビズムも背景に抽象的な立体感を持たせていますね。
ジャン・メッツァンジェ「ティー・タイム」では、背景に境目を持たせて奥行きを表しています。

参考資料:Wikipediaより
●心象描写を背景に起こす
見たままではなく、自分の感情や記憶を色に乗せ、背景へ出すスタイルです。
抽象的な色面や形、感覚的なタッチを使うことで、心の景色がそのまま絵に映し出され、より個性的な作品になります。
抽象画の場合は、画面一面に様々な色やシンプルな形を取り入れますがそこへ具体的なモチーフを前面に置く事で背景の心象がメインのモチーフに心象効果を持たせやすくなります。


【 色の効果 】
色には人の心理に働きかける力があります
背景にもこの色の効能を取り入れることで、作品の印象を大きく変えることができます。
実は絵画や色が持つ効果は、関係機関や団体、大学などが研究を進めています。
国内では、アートセラピーとして人の心理に触れたりしていますね。
参考資料:カラーセラピストコラム 様
・赤
生命力・情熱・熱さ・危険
・オレンジ
活力・陽気・暖かさ・楽しさ
・黄
明るさ・躍動感・目立つ・注意喚起
・緑
若さ・爽やかさ・安全・平和
・青
爽やかさ・冷たさ・静けさ
・紫/灰色
高貴・大人・おしゃれ・上品さ
・ピンク
女性的・愛情・柔らかさ・甘さ・可愛らしさ
・茶
落ち着き・渋さ・大人の雰囲気
・白
純粋・清潔・癒し・軽やかさ
・黒
暗さ・重厚さ・力強さ・高級感
救急車は赤色、信号機も青から変わる注意喚起で黄色になりますね。
紫の洋服も「決意」という意味が込められているとされています。
人、植物、動物、器などメインとなるモチーフにも色はありますが具体的な形がある場合はそのモノの印象が押し出されます。
例えば、顔が卵のようなフォルムで優しそうな表情だった場合、黄色やピンクなど明るい色や癒しの色を背景に置けば、ほのぼのとした印象になりますし、暗い色を背景にすると表情は良くても闇を感じる印象になります。
色は、直感的に人の心理や思考に繋がっていきます。
それを背景に取り入れる事で作品の世界観を強調させる事が出来るわけです!
色が持つ人への影響についてはこちらで別途ご紹介しております!
●明るさを強調する色相の対比
元気が出るような、明るさを強調したい場合は
例えば「赤と緑」「青とオレンジ」のように、お互いが似たような組み合わせではなく反対の色を並べると鮮やかさやインパクト性が増し、画面に力強い印象が生まれます。
例えば、クロード・モネのひまわりの絵は、明るいひまわりが前面に来て落ち着きのある青よりの色を背景にする事でひまわりを自然に協調しています。

参考資料:IMS様
逆にゴッホのアイリスは背景を明るい黄色にし、モチーフを青にする事でインパクト性を持たせた存在感を出しています。

参考資料:アフロ様
赤・黄色・緑・オレンジ・青など一見、明るさや穏やかさを持つ色も画面上の組み合わせにより印象が変わるという事ですね。
●メインを引き立てる明暗の対比
背景を暗くする事でメインとなるモチーフの質感や色を強調させる事ができます。
モチーフ上の光と陰影の強弱をつけることでモチーフへ焦点が集中されます。
夜中でも頭上に満月が輝いていたらそこへ意識が向かいますよね。
昼間は何気なくても暗い部屋の中で人の顔が浮き出ていたら怖いですよね。
背景を暗くする事で前面にあるモチーフの明るさが協調されるので意識が向きやすくなるわけですね。

【 先人達の背景 】
先人達がどのように背景を使ってきたのかを知るのも表現性を高めるヒントになります!
いくつかご紹介していきますね。
●シメオン・シャルダン
静物の存在感を無駄なく協調しているのがシャルダンさんの静物画です。
背景を暗くし前面に配置されるモチーフに対し光の要素をと物体が持つ色彩を上手く組み合わせて強調しています。
華やかではありませんが落ち着きがあり、無機質な静物に対してもどこか温かさを感じますね。

参考資料:ArtSticker様
●ポール・セザンヌ
静物画ならセザンヌさん、と言われるくらいイメージしやすい作品の1つかなと思います。
背景に布を置く事で無機質な印象から生活感が漂います。
布をジグザグさせ器も角度を変える事で複数の方向からモチーフを捉えた表現ですね。
静物画の中でも情を感じるような面白みのある作品ですね。

参考資料:ArtSticker様
●レンプラント
油絵の具のブランドにもなっているレンブラント。
前方に多くの人達が描かれており限られた光が人を強調させており、背景を暗くすることで全体を引き立てています。
左下を見ると小さな少女がいますが多くの人の中でも更に存在感をかもしだしています。
見た印象としては、緊迫した様子が伺えます。
もし、背景が明るい朝であればまた印象は正反対に変わるのかなと思いますね。

参考:西洋絵画美術館様
【 まとめ 】
今回は、油絵の背景をどのように描けば良いのか?、スタイルと色の印象で受ける印象が変わるというお話でした。
●背景の重要性
背景を置く事でメインとなるモチーフを強調したり作品全体の印象を大きく左右する重要な部分。
油絵の背景パターン
●自然体の背景を描く
人が自然さを感じる背景を置く事でガヤガヤしない説得力を持たせる事ができる。
●色だけで背景を描く
余計な情報がなくなることで、主題がより際立ち、写実的なモチーフに対しても抽象的な印象を持たせる事ができる。
●物を用いて背景を描く
雑貨物などを置く事で無機質な印象から生活感や心象要素を乗せる事ができる。
●背景に奥行きを出す
遠近法や空気遠近法を利用し、前と後ろの空間やモチーフに境目をつくり画面全体に立体感を与えモチーフの存在感を強める事ができる。
●心象描写を背景に起こす
自分の感情や記憶を色に乗せ、背景へ出すスタイル。
抽象的な色面や形、感覚的なタッチを使うことで心の景色がそのまま絵に映し出される。
●色の効果
人が色を目視した時に直感的に色毎の印象を感じる。
色の持つ効能を知る事で背景に活かしやすくなる。
●明るさを強調する色相の対比
背景とメインの色を逆にする事でモチーフを強調させたり全体のインパクト性を持たせる事ができる。
●メインを引き立てる明暗の対比
背景を暗くする事で前面にあるモチーフに視線を集中させる事ができる。
●先人達の背景
同じ絵画ジャンルだとしても背景の使い方によって作品の印象が異なるので先人達の絵も参考にしてみよう!
背景は、必ずしも主役とはならないですが作品全体の印象を大きく左右する大事な部分です。
明るい色を置けば活気ある印象に繋がり暗い色を置けば前面のモチーフを協調したり緊張感ある印象を持たせる事ができます。
料理でも出汁がないと食材や調味料の味が中心となりますが出汁を含めると味の基盤が出来上がり風味と混ざり奥深しさを感じます。
言い換えれば、背景とは絵画全体を取りまとめる出汁のような存在です!!
話は変わりご紹介となるのですが
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最後までお読みくださりありがとうございます!
絵の悩みの解決に繋がれましたら幸いです^^
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