2021-09-01

油絵で使うオイルを分かりやすく解説!乾性性油?揮発性油?特徴と使い道は!?

おはようございます!
普段の調理はオリーブオイル、揚げ物では米油を使う油絵心像画家の中西宇仁です^^

画材屋さんに行くと絵具や筆と一緒にオイル類が多く陳列されています。

見た目も同じような形のビンに入っておりカタカナで商品名が表記されたりで◯◯性とも書いてあるし何が何なの?
と選ぶのに悩まれる方は多いかと思います。

僕も油絵を始めたばかりの頃は、何を選べば良いのか迷いました。
悩む時間を削減できるようオイルの役割・特徴・使用用途などをお伝えしていこうと思います!!

こういうお悩みを持っている方にオススメ
・オイルって何?
・水彩絵の具と同じ要領で使えないの?
・xx油、みたいに色々あって何を選べば良いのかわからない!!
・種類あるオイルの使い道とは?

【油絵のオイルとはそもそも何?】

オイルの話に入る前にそもそも油絵具とは何なのか?、から振り返ってみたいと思います。


よくたとえ話で水彩絵の具の場合は、水・・・と同じように油絵具の場合は油、と言われることがありますが深く追求していくと半分正解で半分はずれです。

”薄める”という点で言えば水彩絵の具は水で薄まります
油絵具の場合は、薄めるということではなく支持体(キャンバス)へどう”定着させるか”が重要です。

つまりキャンバスに絵具を定着させるための接着剤は何とするか?ということですね。

水彩絵の具の場合は、乾燥する事で絵具から水分が抜け支持体に定着します。

では、油絵具の場合はどうでしょうか?


油なので水彩絵の具のように蒸発して定着するということはありません。
水に油を垂らすと綺麗に分離するように油は水性とは異なる性質を持っています。

日本画の場合は膠(にかわ)、油絵ならオイルになります。

【油絵具はどうやって定着するの?】

油絵で使われるオイルは植物由来の乾性油と呼ばれるオイルを使います。
このオイルが空気と反応し顔料(油絵の具の基)を固めてます。

顔料が固まる状態が”色が定着する”ということになります。

オイルの役割としては定着だけでなく絵の具を薄めるオイル、出来上がった作品を保護するオイル、筆を洗うオイルなど目的に応じて使い分けられます。

【オイルの種類】

油絵の具で使うオイルには絵の具を定着させる、という効果の他に絵の具を薄める、筆を洗うオイル、作品をコーティングするオイルがあるという事を確認しました。

では、そのオイルを更に深めていきましょう!

●オイルの全体像

油絵で使うオイルの全体像は、このようになります!

●油絵を描く時に使うオイル

▼描く用オイル

  ①乾性油

  油絵の具をキャンバス上に定着させる接着剤の役割を果たすオイルです。
  酸素と反応することで皮膜を形成し固まります。
  固まる事で絵の具の基である顔料を閉じ込めて定着します。

  乾性油は植物の種子や実などの原料から作られています。
  芥子(けし)を原料としたポピーオイル、亜麻を原料としたリンシードオイルが
  あります。
 
  リンシードオイルは、乾燥速度は速いが黄変(紫外線や熱により変色する)が強く
  ポピーオイルは、黄変は少ないが乾燥が遅い、という性質があります。
 
  ほかにも紅花を使ったサフラワーオイルや胡桃を使ったウォルナッツオイルがあり
  乾燥時に硬度や乾燥速度黄変度も変わります。

  ②揮発性油

  空気中に揮発(蒸発)するオイルです。
 
  他のオイルに比べると乾燥が早い特徴があります。
  また、油絵の具の粘着性や濃度の調整、樹脂などを混ぜて作ることもできるので
  ワニスを自作する時の溶剤としても使用できます。
 
  揮発性油は、乾燥が早いのですが乾性油のように皮膜を形成したり固まって強度
  を持つ事がありません。
 
  植物性の原料である松脂から出来るテレピンやラベンダーから作られる
  スパイクラベンダーオイル、石油を蒸留した鉱物性のペトロールなどがあります。

  ③樹脂油

  絵の具の乾燥を促し透明感や光沢を出せるオイルです。
 
  化学合成されたアルキド樹脂、天然樹脂のダンマル・マスチック・コーパル
  などがあります。

  ⑤調合溶き油

  乾性油と揮発性油を調合したもので描き始めから最後まで使える
  オールラウンダーなオイルです。ペインティングオイルが定番です。

●作品保護に使うオイル

完成後の作品に保護用オイルを塗る事で作品を保護します。

天然ダンマルをテレピンで溶解したタブロー、光沢効果が得られるグロッシーバニスなどがあります。

●筆を洗うオイル

「クリーナー」と呼ばれる洗浄液です。
使い終わった筆をこの液に漬け洗浄します。

【使用用途】

基本、調合溶き油であるペインティングオイル1つあれば最初から最後まで網羅できます!

絵の具を早く乾燥させて次の作業に移りたい、光沢を出したい、しっかり絵の具を定着させたい!!
など場面により分けたい場合は、それぞれに見合ったオイルを使用すると良いです。

制作工程に準じてご紹介したいと思います!

●乾性油

接着剤の役割を持つオイルです。メインで使うというよりかは制作が進んでいく工程でペインティングオイルなどに混ぜて調合して使うと良いかと思います。

●揮発性油

キャンバスに木炭などで下書きされた状態から”大まかな着色”をしていく段階です
この時に揮発性オイルを使います。
(揮発性油は、気化しやすく乾燥が早い)

下塗りは、大まかな作業の為なるべく絵の具の乾燥を早めたい所です。
絵の具を揮発性オイルで溶いて塗っていきましょう^^

●樹脂性油

透明感や光沢を出したい時に使うと良いです。

●調合溶き油

ペインティングオイルを使って本塗り作業に入ります。
好みに合わせて絵の具と混ぜてください。

乾性油で絵の具の定着率を上げる事ができます。ペインティングオイルに混ぜる事で強度を高められますが
乾性油の量が多いと粘土が高くなり描きづらくなりますのでお気をつけください!

●作品保護油

作品を保護するオイルです。
タブローやバニッシュなどがあります。

しっかり絵の具が乾燥した後に塗ります

絵の具が乾燥するのにどれぐらい待てば良いの?と判断に困る場合はこちらで乾燥期間を説明しておりますのでご覧ください!
油絵の具超おすすめのメーカー5選。特徴・性質から乾燥期間まで種類別解説!!

●使用工程の整理

下書きされている事が前提です。



①大まかな配色をする
乾きが早い揮発性油で絵の具を溶き塗る。


②本塗り作業
調合溶き油であるペインティングオイルを中心に描き進めます。
制作進行と共に絵の具の厚さも出てくると思うので定着率を上げたくなったら乾性油をペインティングオイルに混ぜる。


③完成後
作品が完成したら絵の具が完全に乾くのを待ちます!!
完全乾燥している状態で保護用ワニスを塗ります。

【結局どのオイルを使えば良いの?】

乾性油、揮発性油、樹脂油・・・と色々ありますが結局何を使えば良いの?シンプルに!!!と思うのが自然だと思います^^



その答えとして、調合溶き油であるペインティングオイルが1本あれば事は足ります!!!

調合溶き油とは、乾性油と揮発性油などオイルの複合オイルでしてそれぞれの良さを兼ね備えた油です。

その為、作業工程の始まり~終わりまで通して使用できるオイルです。

作品を保護する際は、保護用オイルが良いです。



まだオイルに慣れていない場合は、ペインティングオイルから始められると良いですよ^^

【オイルの注意点】

●オイルの種類を間違える

作品制作の初期段階である「下塗り」で揮発性油を使うと乾燥が早くなるとお伝えしましたがその後はペインティングオイルに変える必要があります。



油壺や器に入れて描く事になりますが描き続けると現在使用している油が何なのかを忘れて描き進めてしまうケースが多いです。


中身を入れ替えずに揮発性油のまま描き進めてしまうと絵の具がパリパリに乾燥し剥がれ落ちてしまうのでせっかく出来上がった作品の品質が悪くなってしまいます。

▼回避策

毎回、油壺の中身を確認できれば良いのですがなかなかそうもいかないと思います。


ペインティングオイル用の器、揮発性油用の器など専用容器を複数用意しておくことをオススメします!!


ペインティングオイルは黄色味かかった色をしており揮発性油は無色透明なので見た目で判断が可能となります^^

●オイルの使い過ぎ

神経質になることはないのですがオイルの量が多いと作表の表面がベタベタになります。


ここで余談ですが、絵を初めて描いたのはいつですか?



僕の場合、記憶になるのは小学生の頃の図工の時間でした。
水彩絵の具が定番だと思うのですが水をとにかく多く絵の具に含めてベチャベチャにしていました。



油絵を描き始めたのが成人してからなので初めて描いた時は、同じようにオイルを沢山絵の具に含ませておりました。

結果・・・・・・→ビッチャビチャになり作品の表面がベッタベタになりました。



ペインティングオイルをメインに描く事が多いのですが放置しておくとある程度の光沢を残し表面を触ってもサラサラします。



その為、水彩絵の具と同じ感覚でオイルを扱うとベチャベチャになるので濃度が濃くなったら揮発性油を混ぜて
サラサラにするなど調整されると良いです!!


「ベタベタ感が良いのでは?」と思う方もいらっしゃると思います。



今後、作品を展示する・販売するなど”自分の手元から離れる状況”を検討されているのであれば作品のコンディションを整えておく必要があります。
手元から離れるということは、郵送する事もあるのでその場合作品を梱包する必要があります。




その時、作品がベタベタしていると梱包材とくっ付いてしまうので気を付けたいところですね^^

【オイルの廃棄】

油絵を始めるにあたり先に確認しておきたいのが「後処理」ですね。

その中でもオイルの破棄はどうすれば良いのか?、という所ですが



オイルの破棄は簡単で紙に吸わせて破棄すれば問題ありません。


お料理で余った油を処理する時でもキッチンペーパーなどで吸わせてゴミ箱へ捨てるかと思います。


それと同じでオイルも油なので紙に吸わせてポイっで大丈夫です!!

ちなみに油壺の中に長い期間、油を放置しておくとゼラチン状に固まりますので定期的に処理することをオススメします。

洗浄クリーナーの破棄も同様に紙に吸わせてポイっで問題ありません。



自然に優しく後処理ですね^^

【オイルの商品】

●乾性油

リンシードオイル・ポピーオイル・スタンドオイル等

●揮発性油

ペトロール・テレピン・ラベンダーオイル等

●溶き油

ペインティングオイル(ダンマル、コパールなどがある)

●樹脂油

ダンマルバニス・マスチックバニス等

●保護用オイル

タブロー・クリスタルバニス・グロッシーバニス等

●洗浄液

ブラシクリーナー

【まとめ】

油絵の具は、オイルと混ざる事でキャンバスに定着する。

オイルには、「乾性油・揮発性油・樹脂油・保護用油・筆洗浄液」に分かれている。



・乾性油
酸素と混ざる事で表面に膜ができ固まる性質を持っている。
描き進める中、ペインティングオイルと混ぜる事で光沢・強度を保つことができる。



・揮発性油
他のオイルに比べて乾きが早い。その為、下塗りで乾燥を促進し次の工程へスムーズに移る事ができる。



・樹脂油
光沢や透明感を出すのに適している。



・保護用オイル
作品が完全乾燥となった時に表面を塗る事で作品の保護となる。



・洗浄液
使用済みの筆を洗うのに使う洗浄液。





オイル使用の注意点として、揮発性油を使用した場合調合溶き油であるペインティングオイルに移る必要がある。
そのまま揮発性油を使い続けると絵の具にヒビが入り品質劣化へ繋がる。



ペインティングオイルをベースに乾性油を混ぜる事で定着率アップとなるが粘着性が高くなる為、その場合は揮発性油で薄めるなど困ったら調合!!


基本、調合溶き油である「ペインティングオイル」1つで作品は仕上げられますが制作進行の向上や光沢など使い分けたい場合は、オイルの使用タイミングを判断する必要があります。



・ペインティングオイルの場合
①下塗り

②作品完成

・用途分け
①下塗り時・・・揮発性油


②本塗り時・・・ペインティングオイル(調合溶き油)。
        定着率を上げるなら乾性油を混ぜる。油がドロドロになったら揮発性油で薄めるなど調整。
        光沢や透明感を出したい場合は樹脂油を使う。


③完成・・・作品が完成したら保護用オイルを塗り品質を保てるようにする。


④洗浄・・・使用済みの筆を洗浄クリーナーで洗って終了!!



今回は、油絵の具ならではのオイルに絞ってお話しました!

絵の具にも種類があり同じ色でも性質が異なります。

それにプラスして、オイルも用途に応じて役割があります。



描写スキル、色彩感覚だけでなく深みを持たせるためにも興味があれば様々なオイルを試しに使ってみてはいかがでしょうか^^

今回もご朗読頂きありがとうございます♪

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